人工衛星利用の通信
いち早くサービスを開始した「スターリンク」は人工衛星を使った初めての商用通信サービスということで話題を集めています。
さらにロシア連邦によるウクライナに対する侵略においても、破壊された通信インフラを補う形で提供され、ウクライナ進撃の影の立役者として脚光を浴びたことは記憶に新しいところです。
携帯電話は無線で通話ができますが、基地局までは固定の回線を使用しており、過去の震災でも電柱や施設の損壊の影響を受け、不通となることがありました。
一方、衛星通信サービスでは固定の回線を用いないため、地上で発生する災害の影響を受けることがありません。また大掛かりな基地局や固定回線の延伸が必要ないため、インフラの整わない山間部や離島でも固定回線に代わる基幹回線(バックボーン回線)を、短期間でコストを抑えて準備することができます。スターリンクは日本国内ではKDDIが法人向けのサービスを担っていますが、NTTドコモやソフトバンク、楽天モバイルなど他キャリアによる衛星通信の研究も進んでおり、今後キャリア間の競争による、さらなる活況が期待されます。
そんな衛星通信サービスですが、医療の分野においては、災害医療での非常時の活用は当然のことながら、通信を途絶えさせることができない通常の医療の現場においても、地上の設備を介さない安心安全な回線の選択肢の一つとして候補に挙がる日も近いと感じています。
令和5年1月10日 医療タイムス紙掲載