お知らせ

費用負担軽減し検認省略~自筆遺言書の保管制度開始~

 2020年7月10日より、これまで自宅で保管されている事の多かった自筆証書による遺言書が、公的機関である法務局にて保管できる制度が始まりました。これまで自筆証書による遺言は、紛失・廃棄・改ざんといったトラブルが絶えず、安全性をいかに確保するかが課題とされてきましたが、新制度ではこの課題が解消され、より活用しやすくなりました。今回は新制度における自筆証書遺言のメリットとデメリットをご紹介致します。
◆メリット① 費用負担の軽減
 これまで、法務局で保管したい場合には、公正証書遺言で作成する必要がありました。公正証書遺言は、公証役場に出向き公証人という専門家と作成する遺言ですが、専門家と共に作成できるため、内容に不備がなく作成できる事と、法務局で保管できるという2つの大きなメリットがある一方で、公証人手数料という費用負担が発生するデメリットがあります。所有財産価格や分割方法などケースにより手数料は異なりますが、仮に財産が1億円の場合、約5万円~15万円程費用が発生してしまいます。一方、新制度での自筆証書遺言の保管における手数料は、財産金額や分割方法に関わらず、1通につき3900円です。手数料は申請時にかかるだけで、定期的に支払う必要もないため、費用負担は大幅に軽滅されました。
◆メリット② 家庭裁判所の検認手続きの省略
 これまで、自筆証書遺言を執行する場合は、必ず検認の申立という家庭裁判所における手続きが必要でした。こちらは、約2カ月程度時間がかかり、検認作業の立ち合いも必要であり、とても大変な手続きでした。しかし新制度では、こちらの手続きも不要となりました。
◆デメリット
 新制度の目的はあくまで「保管」にあるため、自筆証書で遺言を作成する場合には、内容の確認を自身で行う必要があります。法務局では内容確認まではしてもらえないため、場合により、遺言が無効になってしまうケースも考えられます。書き間違えていないか、有効な内容になっているか等事前の準備が重要となります。内容の安全性においては、いまだに公正証書遺言の方が安全と言えそうですが、それぞれのメリット・デメリットを検討した上で、活用のご検討をしてみてはいかがでしょうか。
 令和2年9月10日 医療タイムス紙掲載