AIはどこまで来ている~画像や病気の診断も~
大量のデータとディープラーニングの技術を用い、飛躍的な進化を遂げた「AI(人工知能・Artificial Intelligence)」。今や実験段階を経て、実際の利用が始まりつつあります。医療関連施設の運営に関わる方々も、そろそろこの技術に対して心の準備をしておきましょう。
といっても、そう大げさに構える必要はありません。過剰な期待と恐れをもってとらえられがちなAIですが、手足をつければ人間の仕事をほとんどできてしまう、分野を限定せず質問に正しい答えを出すーといった能力は、少なくとも現在のAIにはありません。あくまで限定的な条件の中で限定的な目的に対応するだけ。いつも正しい答えが出るとも限りません。それでも、コンピューターが人間の判断のほんの一部でも代替できれば、不足する人的資源を補ってくれるなど、大きな課題を解決できる可能性が広がります。
医療分野に関係して、今最もホットな領域となっているのが、AIによる画像診断の分野です。国内外多くの大学や企業などが参入し、CTや内視鏡の画像から、がんなどの異常を発見することに成功しています。大腸の内視鏡画像診断支援ツールなど、すでにソフトウェアとして発売しているものもありますので、ご存知な方も多いのでは。今後もよりレベルアップした技術が続々と登場することが期待されますので、目が離せません。
また、病気の診断そのものへのAI活用も注目される分野です。イギリスでは、スマホアプリで利用者がチャットボットに症状を伝えると、その症状をAIドクターが分析し、受診の必要性の有無などを回答してくれるサービスがすでに登場しています。中国では、検査結果やカルテ、手書きの診断書などから、子どもの病気を医師と変わらない精度で診断できるというプログラムができたとのニュースも。
ただし、この分野のAI活用は、車の自動運転の技術でよく話題になるのと同じく、「事故が起こった時誰が責任をとるのか」という問題と切り離せません。現状としては、今年1月に厚生労働省がAI利用促進の会議で確認された「AIは支援ツールにすぎず、判断の責任は医師にある」という事項をしっかりと認識しておきたいところです。AIのアドバイスが原因で診断を間違えたとしても、責任は医師が持つということですから、どんな形でAIを利用するかは慎重な判断が必要でしよう。
経営に関連して、医療分野に限らず、事務や経理等の分野でAIを利用したツールが誕生していることも知っておきたいトピックスです。現在実用化されているのは、チャットやメールを利用した問い合わせ対応、請求書等ある程度フォーマットの決まった書類の自動読取・データ化、入力された経費の自動仕訳など。目的にマッチした製品が見つかれば大きなパワーを発揮するはずです。
さらには、AIを支えるディープラーニングの技術そのものについても、難しい数学の知識がなくても扱いやすいツールが開発されてきています。今後は、医師は基本的な診断をAIに任せてより高度な診断AIを自ら開発するーそんな時代になっていくのかもしれません。