個人版事業継承税制が創設
2019年度税制改正では、法人化していない個人事業主を対象とした個人版事業承継税制が創設されまし
た。
これは土地・建物や車両、診療機器などの事業用資産に係る相続税・贈与税を納税猶予する制度です。診療
所等を開業されている先生であれば、事業用の土地・建物や診療機器が全体の財産に占める割合が高く、相
続税額も多くなってしまうケースも多いでしょうから、そういった先生方にとって注目の制度と言えるでし
ょう。これまで個人事業主の事業承継においては、生前に事業用の土地・建物・診療機器などの事業用資産
を多額の贈与税を支払ってまで移転させる、あるいは後継者に買い取ってもらうという選択をすることは現
実的に難しく、事業用資産の移転は相続まで待つしかないというケースが多かったのではないでしょうか。
今回創設された個人版事業承継税制の趣旨は、相続となるまで事業用資産の承継を待つのではなく、その
移転をできるだけ生前に行えるよう促すことにあると考えられます。
生前に事業用資産を贈与する場合、手続きの流れとしては経営承継円滑化法に従い、まずは税理士など認
定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成した事業承継計画について都道県知事の認定を受けます。
2019年度から5年以内に予め承継計画を提出しておく必要があります。
認定を受けた後継者が「特定事業用資産」を取得し事業を継続する場合に、納付すべき贈与税額のうち特定
事業用資産の贈与に係る贈与税額が猶予されます。ここでいう「特定事業用資産」とは、事業用として使わ
れていた面積400㎡までの土地(不動産貸付事業を除く)、床面積800㎡までの建物、建物以外の減価償却
資産を指します。
2019年1月1日から2028年12月31日までの10年間の時限措置ですので、早めに税理士などに相談・シ
ミュレーションをし、十分に要件を確認した上で取り組まれることをお薦めします。