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自筆証書遺言の要件緩和

 診療所・病院を開業されている60代、70代の先生にとって、遺言の作成というのは、必要性は感じていながらもなかなか手が付けらない仕事ではないでしょうか?実際、遺言を作っているという先生はまだまだ少数派です。それでもしっかりとした遺言があれば、いざ相続となったときには預貯金や有価証券、不動産の名義変更がスムーズに進みますし、また遺された家族が遺産分けを巡って争うといった事態への有効な対策ともなります。
 遺言には大きく分けて、二つの種類があります。一つが公正証書遺言。遺言作成のプロである公証人の力を借りて作成していきますので、たとえ複雑な内容であっても有効な形式の遺言が作れますし、公証役場でしっかり保管されるので安心です。
 もう一つが自筆証書遺言。遺言者自らが自筆で作成するため、公正証書遺言に比べて手軽で安価に作成できるというメリットがある反面、形式の不備で無効になりやすく、また紛失や偽造のリスクも高いと言えます。
 2018年の民法改正で、この自筆証書遺言の要件が緩和されました。現行民法では遺言者が遺言の全文及び作成日・氏名を自書し、押印することが要件ですが、改正法では「財産目録については自書を要しない」とされました。財産目録に関してはワープロ等で作成する、あるいは通帳のコピーや不動産の登記簿謄本を財産目録としても良い(ただし、その財産目録に署名押印をすることが求められる)ということで、自筆証書遺言を作成するハードルが少しだけ下がった改正となりました。
 また、法務局における自筆証書遺言の保管制度が設けられましたので、この制度を利用することで、自筆証書遺言の紛失・偽造・隠匿のリスクに対応することができますし、相続となったときに家庭裁判所の検認を受ける必要もなくなります。
 公正証書遺言、自筆証書遺言それぞれメリットとデメリットがありますので、その点を理解しつつ、専門家の力を借りながら遺言作成に取り組まれることをお薦めします。