福利厚生活用と節税対策~
人材不足が叫ばれる昨今、医療機関でも以前に比べて採用活動は難しくなって参りました。そんな状況下だからこそ、今いるスタッフに満足感を持ってもらえる取り組みが大切になります。今回の経営ワンポイントアドバイスでは、スタッフ満足度を向上させるための取り組み事例を、税務の面の注意点を交えながらいくつかご紹介させて頂きたいと思います。
◆住宅手当
一人暮らしをされているスタッフを雇用する場合に支給し、支給額は借りているアパート等の家賃にもよりますが、2万円~3万円の間で支給することが多いです。一人暮らしの方の場合、家計に占める家賃負担が大きくなるケースが多いので、この手当は喜ばれます。税務上はスタッフへの給与という形でクリニックの経費にすることができますが、スタッフへの給与扱いとなりますので所得税、住民税は課税対象になります。
◆社員旅行
スタッフ同士のコミュニケーション活性化や、普段の労をねぎらうために社員旅行を実施されている医院もよくお見受けします。社員旅行の費用に関しては、下記の要件を満たすことで医院の経費とし、スタッフも給与課税されない可能性が高まります。
①旅行期間が4泊5日以内(海外旅行の場合は滞在期間)
②全従業員の50%以上が旅行に参加している
③クリニックの負担額が過大でないこと(一人当たり10万円以下に抑えることが目安)
◆がん保険
最近では日本人の2人に1人はがんと言われるほど身近で怖い病気です。そのリスクに備えるためのがん保険ですが、福利厚生の一環として、スタッフに加入させて医院の経費とすることも可能です。そのためには、原則全従業員を加入対象とし、契約者は法人か事業主、被保険者が従業員、給付金の受取人は従業員となっている等の要件を満たす必要があります。
上記にご紹介した取り組み以外にも活用されている福利厚生の事例はございます。しかし大切なのはスタッフの働きやすい環境を作ろうという、院長先生の気持ちが反映されていることです。また、経費要件や給与課税されないための要件の確認も大切ですので、新たな福利厚生制度導入の際には、専門家までご相談頂ければと思います。
平成30年4月20日医療タイムス掲載