購入時の契約書保管を~
近年、土地や建物の譲渡があったということで確定申告をお受けするケースが増えています。自分が元気なうちに不要な不動産は思い切って処分しておこうという方も多いようです。
土地建物等を譲渡した場合の所得税、住民税は、売却価格から譲渡費用と取得費を差し引いた譲渡所得の金額に税率をかけて計算します。税率は土地建物等を保有していた年数によって異なり、譲渡をした年の1月1日現在で所有期間が5年を超える場合は約20%、5年以下の場合は約40%です。
譲渡費用というのは、譲渡のために直接要した費用のことで、不動産業者への仲介手数料や登記費用などがあります。取得費とは当初土地・建物を購入した代金、建築費などから建物の減価償却費を差し引いた金額です。
この取得費、何十年も前に購入した土地建物の場合、当時の購入金額を証明できる領収書や契約書を紛失されている方もいらっしゃいます。こういったケースでは概算取得費といって売却価格の5%だけを取得費として計算する方法があります。
例えば次のようなケースを考えてみましょう。20年前に5000万円くらいで購入した土地があるが当時の取得金額を証明する書類を保管していない、その土地を今年3000万円で売却し、譲渡費用として200万円かかったとします。この場合、概算取得費を使う方法ですと、所得税、住民税は売却価格3000万円から譲渡費用200万円と、概算取得費150万円(3000万円×5%)を引いた金額2650万円に約20%の税率をかけて、なんと約530万円と計算されます。
このケースのように、購入当時の資料さえあれば所得税、住民税が0円で済んだのに、資料を紛失してしまったがために、多額の納税を迫られるということになりかねません。
購入当時の取得価格がわからない場合、推計計算による方法がないわけでもありませんが、将来売却の可能性のある不動産については、今のうちから購入時の資料が保管されているか、しっかり確認しておくことをおすすめします。
平成30年3月20日医療タイムス掲載