医療法人の報告義務~
医療法人の場合、決算終了後3か月以内に事業報告書等を都道府県に提出しなければなりません。さらに、医療法の改正により平成29年4月2日以降開始の年度分からは「関係事業者との取引に関する情報開示」ということで、一定の要件に該当する取引については、注記として記載する必要があります。
これは医療法54条で配当を禁止されている医療法人から、理事長やその家族、またMS法人へ診療所の地代家賃、あるいは貸付金といった形で、適正金額の範囲を逸脱した資金を流していないか、監督官庁である県が確認するためと考えられます。報告義務のある「関係事業者」と「対象となる取引」は表のとおりです。
①の取引について、例えば年度の事業収益又は費用の総額が1億円以下の法人であれば、理事長やMS法人などの「関係事業者」に対して1年で1千万円以上の地代家賃を支払っている場合などが報告の対象です。
④や⑤の取引について、例えば年度末の総資産が10億円以下の法人であれば、関係事業者に対して1千万円を超える貸付金の残高あるいは取引がある場合などが報告の対象です。報告義務に該当したからといって、適正な金額での取引であるとの合理的な説明ができれば問題はありません。県から問い合わせがあった場合にスムーズに対応ができるよう、例えば不動産賃料であれば、近隣相場と比して妥当であるなど、資料を整えておくのが良いでしよう。
関係事業者
(イ) 医療法人の役員又は近親者(配偶者又は=親等内の親族
(口) 医療法人の役員又は近親者が代表者である法人
(ハ) 医療法人の役員又は近親者が議決権の過半数を占めている法人
(二) 他の法人の役員が医療法人の議決権の過半数を占めている場合における当該他の法人
(ホ) (ハ)の法人の役員が他の法人(当該医療法人を除く)の議決権の過半数を占めている場合における他の法人
取引内容
① 事業収益又は事業費用の額が、1千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度における事業
収益の総額又は事業費用の総額の10%以上を占める取引
② 事業外収益又は事業外費用の額が1千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度における
事業外収益の総額又は事業外費用の総額の10%以上を占める取引
③ 特別利益又は特別損失の額が1千万円以上である取引
④ 資産又は負債の額が当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の1%を占め、かつ1千万円
を超える残高になる取引
⑤ 資金貸借、有形固定資産及び有価証券の売買その他の取引の総額が、1千万円以上であり、かつ当該
医療法人の当該会計年度の末日における総資産の1%以上を占める取引
⑥ 事業の譲受又は譲渡の場合、資産または負債の総額のいずれか大きい額が、1千万円以上であり、かつ
当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の1%以上を占める取引
平成29年12月1日医療タイムス掲載