認定医療法人制度の拡充~
平成29年10月より医療法人の持分に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(以下「認定医療法人制.度」)が3年間延長され、贈与税が非課税になる要件も緩和されました。今回はその緩和された要件をご紹介したいと思います。
◆持分あり医療法人の問題医療法人に資産が積み重なると、出資金の相続税評価額が膨れ上がります。その場合、事業承継でご子息などへ出資金を移す際に多額の相続税・贈与税が発生するケースが多く、医療経営継続の大きな障害となっていました。
◆認定医療法人制度の仕組みと問題点持分ありかち持分なしへ移行する認定医療法人制度は、①移行計画の認定を受け、②計画に基づき出資金を相続・贈与した際には、納税を猶予され、③一定の期間内に出資持分の払戻請求権を放棄すると納税が免除されるという流れになっています。ただし、④を放棄すると、医療法人は出資持分を払い戻す必要がなくなり、大変厳しい非課税基準を満たさなければ、医療法人に贈与税が課せられるという問題点がありました。
◆改正内容今回の改正により、この非課税基準が廃止となり、認定要件として新たに運営適正性要件が追加されました。つまり、認定を受ければ医療法人に対して贈与税は課税されないということです(認定要件の6年間の維持が必要)。緩和前の要件と比較しますと次の通りです。役員の親族要件と医療計画への記載要件がなったことで、ハードルが下がりました。
事業承継に伴う相続税・贈与税の負担は大きな問題ですが、持分なし医療法人は払戻請求権がなくなるため、退社時に請求ができない等、デメリットはあります。また、移行した後は持分あり医療法人には戻れないので、ご検討される際には税理士等の専門家まで相談下さい。
非課税基準と運営適正性要件の比較
非課税基準
1.法人関係者に利益供与しないこと・
2.役員報酬について不当に高額にならないよう基準を定めていること
3.社会保険診療に係る収入が全体の80%超であること
4.自費患者に対する請求金額が保険診療と同一であること
5.医業収入が医業費用の150%以内
6.法令に違反する事実がないこと
7.理事6人、監事2名以上であること
8.役員の親族1/3以下であること
9.医療機関名の医療計画への記載
運営適正性要件
1.法人関係者に利益供与しないこと
2.役員報酬について不当に高額にならないよう基準を定めていること
3.社会保険診療に係る収入が全体の80%超であること
4.自費患者に対する請求金額が保険診療と同一であること
5.医業収入が医業費用の150%以内
6.法令に違反する事実がないこと
7.削除
8.削除
9.削除
10.毎会計年度末における遊休財産額が、損益計算書の事業費用の額を超えていないこと(新設)
平成29年10月10日 医療タイムス掲載