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事業用定期借地権~公正証書で契約義務~

今回は、身近にありながら意外に難解な、「不動産取引」の中から「事業用定期借地権」を取り上げます。
 借地借家法上では、借地権は「普通借地権」と「定期借地権」に区分されます。後者「定期借地権」の中に「一般定期借地権」・「事業用定期借地権」・「建物譲渡特約付借地権」の三種類があります。
 「事業用定期借地権」は、唯一、公正証書で契約することが義務付けられている借地権となります。気を付けなければならない点は、当事者間で公正証書以外の書面を取り交わしても「事業用定期借地権」としての効力は発生しないという点です。
 次に契約期間についてですが「事業用定期借地権」は10年以上49年以内と定められています。
「事業用定期借地権」は契約期間により特性が二つに分けられますので、以下注意が必要です。
 ①契約期間が10年~29年の場合
 ②契約期間が30年~49年の場合
 「事業用定期借地権」というと法定更新や建物再築による存続期間の延長ができないという認識の方が多いと思いますが、それは①の場合のみとなります。②の場合においては、当事者双方が合意しその旨を特約で定めることにより法律上有効になります。なお①の場合において、当事者双方が合意しその旨を特約で定めても法律的には無効となります(「強行規定」といいます)。
 最後に実務的な観点から一点。「事業用借地権(契約期間10年~29年)」契約おいて、更新不可のため、当事者間において「別途、契約更新に関する覚書等の書面を取り交わせないか」とのご相談を受けることがあります。
 法律上無効で公正証書に記載出来ないため、当事者間で取り交わして保有しておきたいというケースです。お気持ちは理解できますがそのような書面は取り交わさないようアドバイスしています。万が一、係争に発展した場合、もともと「事業用定期借地権」に該当しない契約であったのではないかとの疑義が生じかねないからです。
 このように不動産取引では、専門性が必要な事案もありますので、後顧の憂いを残さないよう確かな専門家への相談をお勧めします。

平成29年4月1日 医療タイムス紙掲載