相続手続きの負担軽減~遺産分割に備え遺言~
相続に備えて遺言を書いておこうかと考えながらも、なかなか相続対策に手が付かないという先生は多いのではないでしょうか。
遺産分割を考える上では、相続人となる家族同士が互いに納得できるような遺産分割が可能かどうか検討することが重要です。開業されている先生の場合、財産に占める事業用資産(先生個人の名義になっている病医院の土地・建物や医療法人の出資持分など)の割合が高い傾向がありますので、どうしても後継者とそれ以外の相続人とで、均等に遺産分割することは難しいかもしれません。そういった場合でも、せめて遺留分(遺言でも侵害することができない相続人の取り分)を侵さないような分割を考え、遺言として書き残しておくのが良いでしょう。
遺言を作っておくことの1つ目のメリットは、遺産分割について相続人同士が悩んだり揉めたりする必要がなくなることです。もし遺言がなければ、相続人の全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどれだけ相続するのかを、一から決めていかなければなりません。相続人同士が揉めてしまうと、名義変更を進めることができないばかりか、後継者が病医院経営を継続するのに必要な資産すら引き継げない恐れもあります。
2つ目のメリットは、相続手続きの負担軽減です。遺言を公正証書で作成し、遺言執行者を指定しておけば、相続で預貯金の名義変更をする際に、相続人全員の実印押印や印鑑証明書を用意する手間が省けます。クリニックなどを個人事業の形態で運営されている場合、相続によって本人名義の銀行口座がいったん凍結されてしまいます。そういった場合に直ちに手続きを進める上でも、遺言は有効です。遺言を書くということは、どうしても先送りにしがちであり、家族からも切り出しにくいテーマですが、家族が揉めることなく、スムーズに相続するためにも、ぜひ取り組んでいただければと思います。
平成29年2月10日 医療タイムス紙掲載