生前贈与の注意点~契約書を作成、管理~
現在、相続税申告における税務調査では、毎年約8割の申告が財産の申告漏れを指摘されています。指摘された財産の内訳を見ると、土地が約13.9%に対し、現預金・有価証券等の金融資産の割合は約47.5%となっています(平成28年国税庁統計)。単純な申告漏れもありますが、相続開始の直前に相続人が引き出した現金や、「名義預金」と呼ばれる財産の申告漏れが指摘されることが多くあります。
名義預金とは、名義は本人以外の親族のものですが、資金源は本人であり、実質的には本人のものとみなされる預金のことをいいます。お子さんやお孫さんの名義で作った預金、専業主婦である妻名義の預金が多額にある場合など、調査では必ずと言っていいほど問題になります。
財産は名義が誰であれ、その資金源は何か、通帳・印鑑の管理、入出金は誰が行っているか、贈与の事実はあるか、名義人の収入等を総合的に勘案して判断されます。贈与として認められず申告漏れを指摘された場合、その現預金は本人の相続財産に加算され、相続税申告で追徴課税がなされる可能性があります。
現預金を生前贈与した際に、贈与税の申告をしたから大丈夫、という訳ではありません。対策として①贈与の事実を明らかにするために贈与契約書を作成し、②受贈者が通帳や、印鑑を保持・管理することが必要です。
生前贈与は節税対策にもなり、次世代に財産を残すという親心から行われることが多いと思います。しかし、前述のように現金を贈与し、管理を自由にできるようにしてしまうと、贈与を受けた人がその現金をすぐに浪費してしまう可能性もあります。そのため、通帳や印鑑の管理をご自身で行われている方も多いと思いますが、結果的に名義預金として課税され、思わぬ相続税額が発生し、トラブルが起きては元も子もありません。
生前贈与は相続対策として最も簡単で有効な手段ですが、計画的に他の相続財産との兼ね合いを考えながら実行していきましょう。
平成29年2月20日 医療タイムス紙掲載