生涯活躍のまち構想推進~仕掛け人的存在 重要~
今回は、「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想について取り上げます。
まず、構想の背景としてあるのは人口問題です。現在、日本の合計特殊出生率が、1970年代半ばより長期的に減少傾向になり、平成26年には1.42となりました。これは、人口置換水準(人口規模が維持される水準)の2.07を下回る状態であり、1975年以降、約40年間続いていることになります(厚生労働省「人口動態統計」より)。
将来人口総数は、2008年に1億2808万人とピークを迎えましたが、合計特殊出生率・出生性比・死亡率を基にシミュレーションすると、2100年には5200万人となり日本国民が半減する事態になると予測されています。
長野県でみますと合計特殊出生率は1.54と全国平均1.42を上回っていますが、これでも人口総数は減ります。政府は「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン・総合戦略」で、出生率を1.8以上に引き上げることを中長期展望として掲げました。
その基本目標として、①地方における安定した雇用を創出する②地方への新しいひとの流れをつくる③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる④時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るともに、地域と地域を連携すること-を上げました。
そのなかで「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想の推進は、②地方への新しいひとの流れをつくる-のなかでの施策と位置づけられています。
ここで注目したいのが、この構想は移住施策なのかまちづくり施策なのかです。筆者はまちづくり施策であるべきだと考えます。単純に「田舎暮らし」を促進し、人を還流させるだけで果たして人口は定着し、将来にわたり地域は活性化していくのでしょうか。
地域の活性化には、地域がそれぞれ状況や原因が異なるなかでどう魅力を取り戻し、元気になっていくかであり、個々に地域特性に応じた処方せんが必要です。
そのためには、地域を知る地元住民が主導となり、わが街の地域資源を再評価・バリューアップするなかで、それに共鳴してくれる人が集っていくことが肝要と考えます。
ただ、住民の主体的参加と交流によるコミュニティー創出を深めていくには、どうしても仕掛け人的存在が重要です。そのけん引役として、行政機関・地方大学・医療介護サービス提供者・地域に密着した民間企業が果たす役割は大きいといえます。