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診療所開業の現状~第三者継承は相談を~

 厚生労働省医療施設動態調査(平成27年1月末概数)によると、一般診療所の数は10万801、医療法人が3万9720、個人が4万3776施設でした。前月に比べて総数で126施設の減少ですが、新規開業を希望する人の数はこのまま継続して行くのではと思います。しかしながら開業する場所の選定が年を追うごとに難しくなっているのが現状です。中でも内科系診療所の開業は、特に厳しくなっています。まだ皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科の方が選定に余裕があるのかも知れません。しかしこれらの診療科も競合が近くに無いと言って、安易に開業の場所を決めてしまうのも危険です。競合施設数が多いか少ないかを問わず、開業する際には綿密なマーケティングが必要になって来ます。
 開業に伴うマーケティングで一番代表的なのが診療圏マップによる一日の外来患者数予測です。例えば開業したい場所を中心に半径1㌔の一次診療圏、2㌔の二次診療圏の円診療圏マップを作製して診療科目別推計患者数を導き出します。特に内科系診療所の場合、この推計患者数も以前に比べて良い数字が出るケースが減ってきています。
競合するクリニックが以前と比べ増加傾向にあり、推計外来患者数が十分見込めない状況下、開業の相談として増えている内容が個人診療所の事業承継です。形態としては親族への承継と第三者承継があります。
 これらのメリットとして考えられる事は居抜き状態により内装や設備などが付いて来るため、医療機器購入等の初期投資を抑えることができ、比較的早期に診療を開始できる可能性があります。また譲渡する側の外来患者数をそのまま引き継げる可能性がある事等も上げられます。第三者への承継の場合は診療所の土地・建物は譲渡となり、売却または賃借となると思います。注意点として幾つか上げられます。1つに承継形態を譲渡なのか賃貸なのかを決定し、適切な譲渡額や賃貸料を計算して求めなければなりません。2つ目に設備や内装がそのまま付いてくるとはいえ、診療に合った内容に改装や医療機器の入れ替えが必要になりますので、そのあたりも考慮に入れた譲渡価額の検討も必要になります。
 第三者の個人診療所を承継する場合、診療所の廃止・開設の届出が必要になると思います(厚生局に確認が必要)。保険診療が出来なくならないように注意が必要だと思います。新規の戸建開業よりもイニシャルコストが節約出来るかもしれませんが、それなりの資金が必要になり、譲渡する側との交渉も重要になりますので、M&Aの経験がある会計事務所等のアドバイスを受けながら、より良い承継が出来る様に話を進めましょう。

平成28年8月10日  医療タイムス紙掲載