日本版CCRC構想~地方創生 果たす役割~
以前もこのコーナーで「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」について触れさせて頂いてきました。今回もこのテーマをとり上げます。
日本創生基本方針では「少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施すること」を目的としてうたっています。
この基本方針に関連して様々な概念が提唱されていますので、用語の整理をしてみたいと思います。
用語①「日本版CCRC」(Continuing Care Retirement Community):「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療・介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を目指すもの。政府は「地方への新しい人の流れをつくる新しい枠組み」として位置づけ。
用語②「地域包括ケアシステム」:団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムの構築。
用語③「エイジング・イン・プレイス」:「地域居住」。「住み慣れた地域でその人らしく最期まで」暮らし続けることを目指すもの。
これらの用語に共通されるものは「本人の意思が尊重され、自ら希望する生き方・人生の終わり方をする」ということです。しかし、現状の「日本版CCRC構想」では「東京圏の高齢化危機回避戦略」や「地方の若者流出対策(雇用対策)」ばかりが優先されているようで違和感を覚える方もいるでしょう。
本当の意味での「日本版CCRC構想」には、そこに住まう住民が健康で生きがいを持ちながら暮らし続けられる魅力ある地域をつくることにあります。まずは地域住民がその地域に住むことの恩恵を享受することを第一とし、「住みやすい」と評価されたコミュニティーには、その延長線に都市部からの人口が流入するという順番であるべきでしょう。
地方自治体が都市部からの移住者獲得に躍起になり、身の丈に合わない施策を推進することがあっては本末転倒です。注目を集めるような特殊な企画ではなく、まずは足元をみてその地域の住環境や自然環境への再評価、そして独自性を積み上げていくことが肝要です。
医療機関・介護事業者においては、地域の魅力を一番知る存在として「地方創生」へ果たすべき役割が広がっているといえるでしょう。
平成28年7月10日 医療タイムス掲載