日本版CCRC構想~心身安心の体制を~
平成26年、政府は内閣総理大臣を本部長として「まち・ひと・しごと創生本部」を設置しました。
創生本部の目的は「少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施すること」と定義されています。
地方創生にかける国の本気度は非常に高く、都道府県や市町村の首長担当部局・地方創生担当部局とホットラインをつなぎ、直接情報提供をするほどの入れ込みようです。28年度には「新型交付金」も交付決定されたこともあり、ほぼ全ての地方公共団体で「地方版総合戦略」が策定される予定となっています。
この「地方版総合戦略」で注目したいのが「日本版CCRC構想」です。「日本版CCRC」は「生涯活躍のまち」と訳され、最近はメディアでも度々紹介されるようになりました。目標としては、東京圏をはじめとする地域の高齢者が希望に応じ地方や「まちなか」に移り住み、地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくりを目指すとされます。
当初「介護難民」の受け入れ先としての地方移住ばかりが取り上げられてしまい、「姥捨て山」イメージが先行したため誤解されている方も多いと思います。しかし、本当の「日本版CCRC構想」は、そこに住まう市民が、健康で生きがいを持ちながら暮らし続けられる魅力ある地域をつくることにあります。そのためには将来にわたり身体と心の安心が担保される医療・介護体制が鍵となります。
「日本版CCRC」で重要となるのは、健康・社会参加・多世代協働のあるコミュニティーと考えます。今後「産官学金労言」の一員として、地域を支えてきた医療機関・介護事業者は「地方版総合戦略」推進者として、大いに活躍されることを期待します。
平成28年5月1日 医療タイムス紙掲載