診療報酬改定の視点
平成28年度診療報酬改定では、医療機能の分化・強化・連携と地域包括ケアシステムを推進する視点が重点課題として挙げられ、急性期治療後の受け皿病床の確保、在宅医療の充実などが重要とされており、また病床区分では7対1の減少が当初思っていたより少なく、その対策が必要など患者の受け入れ体制の再構築に則した点数配分の特徴がはっきり見て取れます。
しかしながらその中でも私が注目したい項目があります。視点の2に挙げられている「患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する視点」です。診療報酬改定は病院、診療所、薬局等の医療機関側に立った改定ですが、今回の診療報酬改定では患者の立場も配慮する旨の説明が視点の中に書かれています。「患者自身が納得して主体的に医療を選択できるようにすること」「プライバシーへの配慮等の要件を見直す」「患者に対する丁寧な情報提供を推進する」等の文言が見受けられます。
かかりつけ薬局は以前から論じられて来ましたが、今回始めて点数がつきました。現在でも1人暮らしの高齢者の人数が増加しています。この事を考えると薬の飲み残し等による残薬の整理、複数の診療科から投薬される薬の種類の多さ等から来る効率の悪い服薬を管理するためには、薬剤師が患者の良き相談窓口になる必要があると私も思います。このように患者に対してメリットのある薬局・薬剤師であればこそ「かかりつけ」と言えるのでしょう。
また「プライバシーへの配慮等の要件を見直す」の点ですが、全ての薬局とは言いませんが、なかにはカウンターで服薬指導している患者の後方1m位の所に待合ロビーチェアを設置している薬局があります。これでは順番を待っている患者は、聞く意志が無くても他人の服薬指導の内容が必然的に聞こえてしまいます。このような所は工夫してプライバシー確保に努力して欲しいものです。
「患者に対する丁寧な情報提供を推進する」の点ですが、これはかかりつけ薬剤師が必要であることの意味を患者に分りやすく説明する必要があるという事です。それと同時に薬剤師の患者に対する服薬指導のやり取りの内容も考慮して頂き本来の薬学的で納得のいく説明であって欲しいものです。これからの医療提供側には常に患者の立場に立った丁寧な対応と患者が納得する情報提供と説明が要求されると思います。
平成28年4月1日 医療タイムス紙掲載