資産家に対し課税強化
近年高額所得者や資産家に対して資産状況の把握や課税強化が進んでいます。
以前このコーナーでも紹介しましたが所得税確定申告の際に、一定要件を満たす方に付いては財産債務調書(所有する財産の所在地や価額を記載する書類)の提出が求められるようになりました。
税負担や社会保障の給付の公平公正を図るため、証券会社や銀行の口座にもマイナンバー付番が順次予定されており、普通預金を通して所得や財産の把握が効率的にできるようになることが考えられます。制度開始のスケジュールは次の通りです。
①証券会社での取引
新に取引を始める方は口座開設時点で、既に取引をしている方は2年以内にマイナンバーの提示が必要になります。
②普通預金口座
平成30年に預金口座へのマイナンバー付番が始まります。当面は任意のようですが、政府の方針では適用開始後3年を目途に付番促進のための措置を講ずることとなっているため、将来的には義務化も検討されるようです。
また、冒頭で紹介させていただきました財産債務調書とは、12月31日時点の財産債務の状況を以前からあった財産債務の明細書よりも詳細に、そして原則全て時価評価にて申告するものです。提出用件は以前からある所得要件(所得金額2千万円超)に財産要件(その年の12月31日時点において有する財産の合計額が3億円以上、または所得税法に規定する有価証券等の合計額が1億円以上)が新たに加わり提出要件が緩和され、対象者がより資産所有者に絞られました。提出対象者を絞る一方で提出を怠った場合や内容が不十分だった場合には、将来修正申告が生じた場合に罰則金にあたる加算税がさらに重くなるというデメリットもでき、厳格な取扱を要します。
このようにマイナンバー制度や財産債務調書により今後一層税務当局の財産把握が効率的に進むことは間違い有りません。将来受けるかもしれない税務調査で申告漏れが発覚し余分な加算税を負担することが無いよう、正確な財産の把握と計画的な相続対策を講じていくことをお勧めします。
医療タイムス紙 平成28年1月20日 掲載