お知らせ

有給休暇の消化義務化

 6月20日掲載の本コーナーにて、「年間5日間の有給休暇の消化義務化」という労働基準法の改正が予定されていることを紹介させていただきました。現在年間5日間の消化ができていない事業所では、5日は必ず有給休暇が取得できる体制を整えなければなりません。経営に携わる者としては、スタッフ不足の中でこれ以上休まれることは、診療に支障をきたすのではないかと心配をする所だと思います。消化の義務化は平成28年の4月の改正内容のため現時点では詳細は未定となっておりますが、有給休暇に関してご質問いただくことが多い事項を交えて対応策を考えて行きたいと思います。

①どのように有給休暇を消化すれば良いでしょうか?
 改正案では有給休暇の取得が年間5日に満たないスタッフには、スタッフより意見を聞き、事務所から予め時季を指定して有給休暇を与えることになっています。例えば、内科であれば夏場、皮膚科であれば冬場等が一年の中でも業務に余裕が出る時期となりますので、この時期で指定できると診療への影響も少なくできるでしょう。
 また、現在でも「計画的付与制度」と言う形で予め有給休暇を定め、取得を促進する方法もございます。

②時間単位での有給休暇が可能であると聞きましたが?
 有給休暇は1日単位の取得が原則ですが、労使の合意があれば半日単位での取得、さらに労使協定を締結すれば5日の範囲内で時間単位で取得させることもできます。例えば子供の学校行事のために数時間、中抜けする等のケースでも有給休暇の消化ができるようになります。

③繁忙期での有給休暇の取得は拒めますか?
 これは土曜日等の業務が多い日に有給休暇日を指定された場合に、取得を拒めるかという質問です。経営に支障をきたす場合には取得日を変更する「時季変更権」というものがあります。しかし、原則的にはスタッフからの申請日で取得できることが望ましいため、申請日で取得できるように努める一方で他のスタッフのことも考えてもらい、繁忙期は避けて取得申請してもらうように、事前の相談が重要と思います。

※①、②の制度導入の際には労使協定や就業規則の変更などの手続きが必要になりますので一度専門家へご相談下さい。
 有給休暇の消化義務化は事業所にとっては課題ですが、効果的に使えばスタッフにとっても働きやすい職場となります。採用の際に、給与額よりも有休のとりやすさをPRする医院もあるようです。労働者が権利である有給休暇を一方的に取得申請するのではなく経営者と相談して決めていくような労使関係となることが望ましいことと思います。

医療タイムス紙 平成27年7月10日掲載