遺産相続のトラブル回避
今年は相続税の改正があり、今まで以上に相続についてご心配される方が増えてきたように感じます。相続について、税負担の心配以外に忘れてはならないのが誰に何の財産を相続するかということです。「私たちの子供達は大丈夫」と思っていても悲しいことに相続財産を巡るトラブルは珍しいことではありません。
今回は遺産相続トラブルを回避するために有効な、遺言についてご紹介させていただきます。遺言とは、人が死に臨んで相続人等に意思を伝える最終手段です。また、文字に書かれることにより、揺るがしがたい意思表示となります。一般に用いられる遺言の方式には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言とは遺言者が全文を自筆で書く形式の遺言書です。自筆証書遺言のメリットは自分で作成し、自分で保管するだけなので簡単で、費用もほとんどかからないという点です。ただし、遺言者の真意が文章ではっきり示されない場合等があり、後日相続争いの原因となる場合があります。また、自筆証書は遺言作成者の死後、家庭裁判所の検認手続きが必要になります。
検認とは遺言書の内容について形式が整っているかどうかを家庭裁判所が確認する手続きです。検認手続きの済んでいない遺言書では、不動産名義の変更や預貯金の解約等をすることができませんので注意が必要です。
もう一方の公正証書遺言は、公証人役場で2人以上の証人の立会いのもと、公証人が遺言書を作成するという形式の遺言です。公正証書遺言のメリットは、遺言書作成のプロがアドバイスするため意思を明確に表現することができ、変造、偽造がなく、検認手続きも不要である点です。ただし、自筆証書と違い、少なくとも3人以上の他人に遺言の内容が知られることや、作成費用がかかります。しかし、遺言書を作成した事実が全国どこの公証役場でも検索することができ安全確実であることから、公正証書遺言の作成をお勧め致します。
また、遺言者は遺言の効力が発生するまでの間いつでも、従前の内容を撤回・変更することができます。遺言書を書いた後で、心情の変化などにより遺言書の内容と遺言を作成したご本人の思いが食い違ってしまう場合がありますので、一度書いた遺言書は定期的な見直しをお勧め致します。
医療タイムス 平成27年6月10日 掲載