医療機関の接遇について ①
今回より二回に分けまして、医療機関の接遇について書かせていただきます。
初回はそもそも接遇とは何かを、江戸仕草を例に上げて考えてみることにしましよう。
江戸仕草の代表的なものに「傘かしげ」「こぶし腰浮かせ」というものがあります。
「傘かしげ」は、雨の日に雨の雫が行きかう相手にかからないように相手と反対側に傘を傾ける事です。「こぶし腰浮かせ」は、待合や観覧時に座席が混みあっている時に座席を少しずつ詰めあって、立っている人がなるべく座れるようにする事です。
これらは、江戸時代には他人に言われてやるのではなく、自分で気付いて自然に出来る事が一人前の大人としての条件と言われていたそうです。これらの行為はまさしく接遇の原点といえるのではないでしょうか。「してもらって嬉しい」「してあげて嬉しい」といった対等の良い人間関係を築き、思いやりの心を持って行動する事が、接遇と言えるのでしょう。
最近では、医療はサービス業と言われ、医療機関の評価は医療技術の高さはもとよりですが、接遇の善し悪しが医療機関の「質」の善し悪しを判断する基準とされている様になってきています。それに伴い、医療業界内でも接遇への関心が年々高まっており、比例してスタッフの接遇レベルも上昇傾向で、素晴らしい接遇をする医療機関が増えてきているのを実感しています。
ただ、医療機関はスタッフの入れ替えの多い業種でもあります。その為スタッフ個々の接遇のレベル(接遇力)に差が出ており、とても残念に感じることがあります。さらに、医療機関での接遇と言いますと、とかく患者対応のみに焦点が行きがちですが、患者対応のみならず一緒に働くスタッフ同士もお互いを思いやって行動する事ができれば、より安定した医療経営になっていくことでしょう。
ぜひ一度、外部、内部の接遇の見直しをされる事をお勧めします。
医療タイムス紙 平成26年9月10日 掲載