お知らせ

重要な事前の建築計画

 製品の開発やシステム開発のプロセスにおいて、工程の初期段階(フロント)に重点を置き、
掛かる労力や資源を集中的に投入していく手法を「フロントローディング」といいます。
 一般的に製造プロセスにおいて不具合などが発生する場合、その修正に掛かるコストは下流へ行けば行く程大きくなります。後工程に発生する可能性のあるリスクや問題点を予期して前工程でつぶしていくことで、品質向上や納期の短縮など大きな成果が生まれます。この仕組みは、医療施設の建築についても大きな効果を発揮します。

 実際に事前の検討が疎かだったり、曖昧だったために、結局設計や施工に手戻りが発生し、費用や時間を浪費した事例は多くあります。例えば、着工後にクリニックの利用形態が「シューズオフ(上履き)」から「シューズオン(土足)」に変更になり玄関周りのレイアウトや床材等、大幅な設計変更を行った事例、上棟後にレントゲンが置き式から天井吊り下げタイプに変更になり、一度張った天井を解体し鉄骨フレームを組み直すため、確認申請の変更申請を行った事例など、「もっと前に検討しておけば良かった」と悔やむ事例は数多くあります。

 クリニックの建築設計にあたっては、事前に検討すべき事項が数多くあります。まず医師は自身の開業・診察方針を明確にします。設計者はその開業・診療方針を詳細に聞き取る事が肝要です。次に診療方針を実現するために必要な部屋や設備などの必要機能を把握します。医師・スタッフ・患者動線計画やまたスタッフ数の把握も必須事項です。その他、導入する医療器機や電子カルテの種類なども設計を左右する重要な要素となります。他にも医師の嗜好やスタッフの意見等を可能な限り聞き取る必要があります。

 当社においては、以上の事柄をもれなく設計前に聞き取れるよう「設計前聞き取りシート」をフォーマットにし、事前に医師にお渡ししております。意思からも、「手間は掛かるが、これを記入することにより、自身の開業方針や診療方針がより明確になる」と好評を頂いております。
 「段取り八分」といいます。実施設計・施工に移行する前の基本設計の段階で建築に関わる変動要素はつぶしておく。患者様にも医師・スタッフにも使いやすく・居心地のよい施設を創るために、開業計画時にはフロントローディングを意識して行動されることをお勧めいたします。

医療タイムス紙 平成26年6月20日 掲載