クラウド型電子カルテの導入
私が診療所の開業を手伝って来ました中で電子カルテを採用される先生が多くなって来た時期はそう遠い昔ではありません。現在の開業時における電子カルテの採用率は、おおよそ90%を超えると推測されますが、その頃の開業時のシステムと言えば、レセコンが主流でした。電子カルテの導入が正式に認められたのは1999年です。当時の厚生省による「診療録等の電子媒体による保存について」の通知によって、カルテ入力者の責任の所在、虚偽入力、書換え等が無い事を担保するための「真正性」、情報の内容が必要時に肉眼で見続可能である事の「見続性」、そして必要な期間復元可能な状態で保存が出来る「保存性」の「電子化の3原則」をクリアすれば、カルテを電子データとして保存そして管理することが認められました。
導入が正式に認められるようになってから、数々の電子カルテのデモンストレーションに立ち会って来ましたが、初めのころは医師からの実践に則した要望に対して、ソフトのレベルが立ち遅れていたように思われます。しかし最近は医師からのさほど細かい要求は求められなくなりました。電子カルテが導入可能になった当初からの医師側の具体的要望が、確実にソフトに反映されている事が要因の1つになっているのかもしれません。いずれにしても以前に比べれば着実に操作面、運用面で進歩している感じがします。
日本政府のIT戦略本部は2009年7月6日、「I-Japan戦略2015」を発表しました。そこでは政策の3大重点分野の1つとして医療、健康分野を上げています。その中に適切な価格で医療機関等における情報処理環境の整備に資するASP・SaaS等を活用した電子カルテシステムや遠隔診療機器等の導入支援を行い(中略)地域医療連携や健康や健康管理のための医療機関等の間の情報連携の仕組みを整備する。とありますが、これを考慮に入れ、これから注目しなければいけないのがクラウドを利用した電子カルテの導入です。周知の通りクラウド型電子カルテは自院にサーバーを置かず、診療データは契約先のデータセンターに蓄積し利用者はその利用料を支払う。特徴は色々有りますが、在宅医療の場合ipad等の端末を患者宅に持ち込み現場にてカルテを起動しその場でカルテに書き込み医院のスタッフもそのデータをリアルタイムに参照が可能になる等です。
反面、まだ地域ではさほど導入例がないため、周辺医療機器との連携の可否やトラブル時の対応など、導入に当たってはベンダーと念入りな動作確認や、サービス対応などの確認が必要かと思われます。しかしこれからは電子カルテ市場でのクラウド型のシェアが増して行くのではないかと思われます。いずれにしても診療所としても地域医療連携を念頭に置いたIT環境の準備がそろそろ必要になってきたのではないでしょうか。
医療タイムス紙 平成26年3月10日 掲載