雇用・所得拡大の税額控除
今回は雇用促進税制、所得拡大促進税制についてご紹介致します。どちらも従業員を雇用したり、昇給させたりするとすることにより得られる税額控除となります。
<雇用促進税制>
雇用促進税制とは前年より従業員を一定以上増やすなどの用件を満たした場合に法人税の税額控除の適用が受けられる制度です。この制度は平成26年税制改正にて平成28年3月31日まで延長の予定です。この制度は雇用者増加数5人以上(中小企業者等は2人以上)、雇用者増加割合10%以上等の要件を満たした場合に、法人税額の10%(中小企業者等は20%)相当額を限度として雇用者増加数1人当たり40万円の税額控除適用ができます。通常、クリニックは中小企業に該当しますので2人以上の増加が要件となります。
ただし、適用年度とその前年度に、事業者都合による離職者がいる場合には対象となりません。また、雇用促進税制を適用するには雇用促進計画を事業年度開始後2ヶ月以内にハローワークに提出しておくことが必要です。なお、所得税にも同様の制度があります。
<所得拡大促進税制>
所得拡大促進税制とは次の要件を満たせば法人税額の10%(中小企業者等は20%)相当額を限度として国内雇用者に対する給与等支給増加の10%が税額控除できるというものです。
適用要件
①給与等支払額が基準事業年度(平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度をいいます)の給与等支給額と比較して2%以上増加していること。
②給与等支給額が前事業年度の給与等支給額を下回らないこと。
③平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと。
この制度は平成26年税制改正にて平成30年3月31日までの延長の予定です。こちらも所得税にも同様の制度があります。
これらの制度はどちらも共通して、青色申告を提出する事業主・法人であることが条件となりますが、この2つを同時に併用することは出来ず、どちらか一方を選択することになります。どちらがより節税につながるかについては個別事情にもよりますが、毎年従業員の給与を昇給させている場合には所得拡大促進税制、従業員の増員を検討している場合であれば雇用促進税制が該当となります。
両方選択可能である場合には、クリニック程度の事業規模であれば雇用促進税制の方が大きな税額控除を得ることができますので、税理士などの専門家に試算してもらう事をお勧めします。
どちらも同じぐらいの節税メリットである、もしくは人員増加や昇給が不確定である場合には、機会を失わないように雇用促進税制適用のための雇用促進計画書を提出しておくことをお勧めします。これは雇用促進税制の計画書を提出した場合でも申告の際に所得拡大促進税制を選択することが可能な為です。
医療タイムス紙 平成26年2月20日 掲載