高まる高齢患者の割合
最近開業を希望されておられる先生の中で比較的多くの方が高齢者を意識されたスタイルをコンセプトの中に組み込まれていらっしゃいます。診療所内の機能、医療器械、スタッフの接遇などです。行政的には国民の医療に対するニーズの変化による医療を取り巻く環境の変化に対応するため「社会保障・税一体改革」に基づく病院、病床機能の分化・強化や在宅医療やチーム医療の充実が推進されている状況が挙げられます。
実際に医療を取り巻く環境で高齢者の患者割合がこのところ増加しているのだと思います。開業医で内科、消化器科の先生のお話なのですが、最近は高齢者の患者の受診数が多くなり内視鏡の検査がめっきり減ったそうです。とはいえこの現象も地域性にもよると思いますが多かれ少なかれ高齢者層を対象とした医療の体制を整える必要性は現場でも感じ取られて来ているのではないでしょうか。
医療を取り巻く環境でもう1つ考えなければいけない事は人口の減少と高齢者人口の割合の増加です。これも地域差はありますが例えば長野県を例に取れば平成23年4月1日の長野県の人口は214万3394人だったのが平成24年には213万4738人、平成25年に至っては212万1223人と2年間で約2万2000人の減少になります。人口の減少に反し高齢者人口の割合は増加して行きます。全国の老年人口割合を見ると、平成22(2010)年現在の23.0%から平成25年(2013)年には25.1~2%で4人に1人を上回り、平成47年(2035)年に33.4%で3人に1人を上回り、50年後の平成72(2060)年には39.9%すなわち2.5人に一人が老年人口となります(国立社会保障・人口問題研究所)。
ちなみに松本地区を見てみると、平成25年9月1日現在で人口が24万3193人で65歳以上の高齢者が6万916人、高齢化率は25%です。要介護度1~5の人数は7807人で、高齢者の1人暮らしは6846人(平成25年5月1日)です。このような環境の中で全ての診療所が在宅医療に特化する事は事実上不可能だと思いますが、地域特性に応じて地域包括ケアシステムの範囲で在宅医療を行う診療所が必ず必要になって来ると思います。在宅医療に関する診療報酬点数は高いのですが参入する場合は十分に地域特性を把握、理解した上で臨んで頂きたいと思います。
医療タイムス紙 平成26年1月10日 掲載