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医院承継の注意点

 日頃開業医の先生方とご面談する中で、医師、歯科医師になられたお子様が医院を引き継いでくれることになったというお話を伺いすることがあります。今まで大先生が築いてきた医院を引き継いでもらえることは大変嬉しいことです。しかし、せっかく基盤がある医院を継承したのに、この継承によって逆に苦労したという話もありますので、今回は注意したいポイントについてご紹介いたします。

(1)患者数の問題
 大先生が開業してから何十年と経過している場合、比較的年を重ねた患者さんが多く、通院していた患者さんが入院や亡くなることで患者数が減少傾向となっていることがあります。こういった中で、若先生が帰って来てすぐに収入が上がるかというと、苦戦されるケースが多いです。そのため、新規開業時と同じように増患対策として院内配布物やホームページでの案内に加えて、若先生の専門分野で近隣医療機関と連携していくことや、地域活動へ積極的に参加することが必要です。

(2)地域人口の問題
 内部要因である来院患者の状況に加えて、外部要因である地域人口増減や競争医療機関の様子も重要な点です。増患対策を行っても、人口減少地域では思うように患者数を増やすことができません。大先生が開業された時には最適な開業地であっても、これから何十年と現役時代が続く若先生にとって最適な開業地となっているかは不明です。必ずしも同じ場所で引き継ぐことが最善でないケースもあるでしょう。人口動態や診療圏調査の結果を元にこの場所で続けるか、移転するか検討した方が良いと考えます。

(3)スタッフ引き継ぎの問題
 大先生が雇用していたスタッフを、そのまま継続して雇用することは、慣れたスタッフがいることでスムーズな承継ができる一方で、一概に言ってはいけませんが、大先生の時代から勤めていたという意識が新しいスタッフとうまくいかない原因になっているという話も耳にします。医療法人はドクターが交替しても組織が継続しているため雇用関係が継続しますが、個人事業では事業主交替のタイミングで雇用関係は一度終了します。無条件に継続せずに、若先生の方針や労働条件で勤務してもらえるか確認し契約することをお勧めします。また同じ医院で働くメンバーとして、よい関係で仕事ができるためには、院長交替前から一緒に働く機会等を通して、関係構築に努めていただくことも必要です。

 これから医院継承をされる方はこのような問題点にご注意いただき、有形無形の財産を継承することが最善の承継方法になるかご検討頂ければと存じます。

医療タイムス紙 平成25年11月1日 掲載