在宅医療者への歯科支援
厚生労働省「在宅医療・介護あんしん2012」では『「施設」から「地域」へ・「医療」から「介護」へ』をスローガンに医療介護サービスの適切な機能分担と居住系・居宅サービスの充実を目指しています。また、地域包括ケアの実現においても、他職種協働による在宅チーム医療体制を構築することが欠かせません。今回は在宅療養者に対する歯科領域における支援の必要性を考えてみたいと思います。
中央社会保険医療協議会では、「要介護者等に対する口腔衛生指導等による誤嚥性肺炎の発症率の減少」や「訪問歯科の非受診要介護高齢者における義歯継続使用割合の低下」を指摘し、在宅歯科、特に要介護高齢者等に対する歯科的介入の効果を認めております。
実状、介護の現場では、「口腔内細菌と内科疾患との関連性」「咀嚼機能と老化・痴呆の関連性」など、口腔環境が高齢者の全身の健康と密接に関連しているとの指摘がされています。 単に口腔清掃・歯石の除去・義歯の調整だけに留まらず、口腔の疾病予防・機能回復、そして全身的な健康維持などQOLの向上を目指した口腔ケアが重要視されています。
ただし、現状での大きな問題は、訪問歯科診察・歯科関連サービスについて、患者や患者家族からの認知度が非常に低いことです。さらに、介護従事者からも、要介護高齢者等における歯科治療・口腔ケアのニーズは高いと認識している反面、介護保険より訪問歯科診療への要請は極めて低いといった報告もあります。介護の現場から訪問歯科診療を必要としているという情報が歯科医師にきちんと伝わる体制づくりが必要です。
今後、口腔ケアの重要性が歯科領域でも認識され、急性期・回復期・維持期および在宅医療といった個々の医療現場において、様々な歯科医療の介入が求められます。
歯科医師そのものが自分の立ち位置をどうしていくのか、インプラント・審美のみならず、今喫緊の課題である高齢者在宅医療への積極的介入と御活躍を期待したいです。
医療タイムス紙 平成25年3月1日 掲載