クリニックの感染対策
気温と湿度が下がると、風邪やウイルス等による急性胃腸炎やインフルエンザが流行し始めます。
このところクリニック設計の際、先生方から「施設の感染対策」に対するご要望を承る事が多くなりました。ここ数年の間に大流行したインフルエンザやノロウイルス等の怖さを目の当たりにし、施設側も患者側も感染予防の重要性に対する意識が定着してきているのであろうと思われます。
感染症の経路としては、主に「直接感染」「飛沫感染」「空気感染」があります。これに対する対策としては「防塵」「抗菌」「非接触」が重要になります。
クリニックの設計の際、感染予防・防止策としてまず必要になるのは、必要な機能の配置計画と動線計画です。特に受付・待合・診察室等は一般患者と感染症患者の動線を交錯させない検討が必要です。入り口付近に第一次受け付けを設け、患者のスクリーニングを行い、動線を完全に分離する事例もあります。また院内における清潔・不潔の動線の分離も重要な手立ての一つです。
空気感染予防対策としては、まずは空気の浄化と換気が最も重要です。特に患者の滞留するスペースへは、常に新鮮な空気が送られる換気システムが必要です。また一定方向への空気の流れを定着させるためには、不要な空気の拡散を防ぐ必要があり、建物の気密性が確保されている事が前提になります。
併せて防塵対策も有効な対策です。床の素材は清掃性を考慮し、ワックスフリーの塩ビ系の長尺シートを用い、壁際の納めをR面とします。更には壁面まで30センチメートル程度張り上げることにより防塵効果一層高まります。カーテンも、光触媒による抗ウイルス防汚タイプを用いると効果的です。
接触感染予防として、まずは手摺等の共有部の接触部は抗菌仕様とします。また使用頻度の高い手洗いの蛇口は水洗いとし、受けるボールもなるべく深いものを選択する事により水跳ねを防止します。併せてトイレの小便器や洋便器も自動水洗とし非接触タイプを選択することが効果的です。
クリニックの設計から検討できる「感染予防・防止対策」は他にも多くありますが、それを利用するスタッフの感染対策に関する意識レベルの差で、その効果は大きく異なっています。
ハード・ソフト両面からの、「医療の安全」に対する根本的な検討と実践が必要になります。
医療タイムス紙 平成24年12月10日 掲載