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個人診療所の事業承継

 今回は最近ご相談件数が多い診療所の事業承継について取り上げたいと思います。事業承継はどの業界でも大きな課題ですが、特に医療機関では後継者である親族が医師・歯科医師免許を所有していないと事業を承継できないという悩ましい問題を抱えています。
 そこで診療所を承継させる場合、親族以外にも後継者の対象を広げて考える必要があり、選択肢は多岐にわたります。今回は個人診療所の事業承継についてご紹介いたします。

親族への承継 
 多く採用される承継のスタイルですが、承継される方に診療所の土地建物など診療所経営に必要なものが相続されるよう、生前贈与や遺言などによる対策が必要です。後継者以外の方が相続することとなり承継が困難となることも考えられます。また、診療所をあらかじめ医療法人にしておくことでスムーズな承継手続や相続対策も可能となりますので、医療法人なりの検討を事前に実施することをお勧めします。

第三者への診療所の土地建物を賃貸
 ご自身の診療所は閉院となりますが、診療所の土地建物を第三者である医師、歯科医師に賃貸することで継続的な不動産収入を得ることができます。賃借する方の診療科目が同一である場合には、医療機械なども賃貸物件の対象とすることが可能です。

第三者へ診療所の土地建物を売却
 これは診療所の土地、建物、医療機械などをすべて売却する方法です。住宅併設の診療所に住み続ける場合、売却は難しいと考えられますので診療所単独の物件が理想です。売却した金額は譲渡所得として税金が課税される可能性があります、税金を支払った後の売却手取り金額がいくらになるか事前に試算をしたり、診療所に関する銀行借り入れなどの負債がある場合、その手取り金額で返済が可能かなどを事前に検討し売却希望金額の目安にする必要があります。
 
 第三者への賃貸や売却は相手探しが必要なことから、想像以上に時間がかかることがあります。事業承継はまだまだ先の話、と考えがちですが、早い時期からどのようにするか考えておきたいものです。次回は医療法人の事業承継についてお伝えしたいと思います。

医療タイムス紙 平成24年11月10日 掲載