繰上返済の検討ポイント
先日、開業されている先生からお金が貯まってきたので銀行からの借入金を一部繰上返済したいとのお話をいただきました。経営が安定し、お金に余裕ができた時にご相談いただくことが多い内容です。今回は繰上返済を行う際の考え方や、注意点をお話します。
繰上返済は、返済期間の途中に定められた返済額以上に返済することでその後支払う利息額を軽減できることがメリットです。一方で、繰上返済を行うためには金融機関に支払う手数料がかかります。また違約金が発生する場合もありますので、まずは借入金融機関に問い合わせるなど、契約内容を確認しましょう。
また、返済した後に資金不足にならないようご注意下さい。新しい設備投資等の予定や季節変動による収入の上下、賞与、納税資金の準備状況をご確認下さい。
続いて複数借入金がある場合ですが、どのような借入金を繰上返済すると、より大きなメリットが得られるでしょうか。検討する際にチェックするポイントは以下の点です。
①金利
②現在の借入残高
③残りの返済年数
④固定金利か変動金利か
⑤担保、連帯保証人の状況
⑥団体信用保険の有無
この中で多くの方が意識されているのは金利だと思います。金利が異なる次の2つの借入金を繰上返済した場合の軽減効果を比較してみました。
【例:500万円の繰上返済をする場合】
金利 残高 残りの返済年数 利息軽減額
(Ⅰ) 3.0% 500万円→0円 5年→0年 38万円
(Ⅱ) 2.0% 1,000万円→500万円 10年→5年 75万円
(Ⅰ)全額返済した場合、軽減できる利息は約38万円です。一方(Ⅱ)1,000万円のうち、500万円を部分返済し、残りの返済年数を10年から5年に短縮した場合に軽減できる利息は約75万円と、こちらの方が軽減効果は高くなります。このように一見すると(Ⅰ)の方が金利が高く、繰上返済を優先意的に行った方が良いと考えがちですが、(Ⅱ)のように低い金利でも長い期間で借りているものを繰上返済することで、より利息支払い額の軽減効果が期待できます。(住宅ローン控除を受けている借入金の場合返済期間10年以上という条件がありますので期間短縮にはご注意下さい)
今回の例は軽減できる利息額を比較したものですが、将来金利が上がることを予測すると変動金利が上がることを予測すると変動金利の物を先に返済する方法もあるでしょうし、連帯保証人や団体信用保険加入状況によっても、優先順位は変わってきます。まずは全ての借入金の条件を比べてみて、繰上返済を検討されることをお勧めします。
医療タイムス紙 平成24年9月10日 掲載