医院の定期点検のすすめ
医院の定期的な点検は、健康体質な医院を継続していただくのには欠かせません。先生ご自身のお体の定期検診と合わせて、医院の点検も実施していただければと思い、今回は確定申告書(決算書)を使った点検方法をご紹介いたします。
会計事務所へ確定申告を依頼している先生方は、そろそろ申告書がお手元に届いている頃でしょうか。確定申告の書類は大きは「所得税の確定申告書」「青色申告決算書(以後、決算書)」にわけられ、決算書は1年間の医院の成績表とも言えるものです。今回は決算書の左上の項目から順に点検していきましょう。
①売上金額・・・医院の年間収入 (保険・自由診療収入の合計)です。前年に比べての増減が気になる項目ですが、金額の比較に留まらず、決算書に記載されていませんがレセプトの枚数、診療単価で比較してみて下さい。毎年枚数の減少が続く場合には、著しく患者数が減少している地域はどこか、どの世代の患者層が減少しているのか、診療単価の減少であれば、どの診療行為が減少しているのか、その原因によって改善の処方が変わってきますので、まずは原因を探りたいところです。
②売上原価…医院の年間仕入(診療に直接用いる薬品、診療材料費等で売上に比例して増減する項目)です。金額ではなく、売上に対しての比率(原価率=原価/売上)で比較します。2%以上数字が増減するようであれば、報酬改定の影響や、診療内容、薬品を変更していることが考えられます。また公表されている平均データとの比較の際は、同じ診療科であっても院内・院外処方の別など、より自院に近いデータとの比較が必要です。
◆TKCM-BAST黒字機関参考 原価率(院外処方):内科16%、耳鼻科6%、整形外科15%
③経費…医院の年間経費(医院の維持運営上必要な支出で、収入の増減に影響を受けにくい)です。この中では給料賃金が大きな割合を占めています。給料が過剰でないかの指標としては、粗利益額(売上から売上原価を引いた額)に占める人件費(給料賃金・福利厚生費等の合計)の割合を計算する労働分配率という指標が有効です。
◆TKCM-BAST黒字機関参考 労働分配率(院外処方):内科31%、耳鼻科31%、整形外科36%
また、決算書2頁に給料賃金の内訳でスタッフ別の給与額の記載があります。合計金額だけでなく、個人毎の給与が職種、役職からみて妥当か、平均的な医療系資格者の給与と比べて低過ぎないかの分析が必要です。
今回は決算書を使った点検方法をご紹介しましたが、年度の節目に看板の記載内容や、待合室の快適さ、患者さんへの対応等も合わせて点検してみてはいかがでしょうか。
医療タイムス紙 平成24年4月20日 掲載