お知らせ

サービス付き高齢者向け住宅の動向

 このところ医療福祉関連の雑誌や新聞などを見ると必ずと言っていい程「サービス付き高齢者向け住宅」に関する記載があります。
 “建設業者にとって建設不況を打開する千載一遇のビジネスチャンス”“木造建築による超ローコスト高齢者住宅”といったタイトルが不振にあえぐ建設業者の目に留まらないはずはありません。

 われわれも病院・介護事業者様向けに当事業参入セミナーや勉強会を複数開催させて頂いております身でありますので、その様な記事を目にする度に複雑な心境になります。
 高齢者のための住まいの整備は、今後更に進行する少子高齢化社会を踏まえると喫緊の課題であります。しかしその整備があまりにも性急にしかもビジネスライクに行われるとするとそれは懸念すべきことであります。

 かつて高齢者の住宅に関して法規制が無い時代に多種の高齢者住宅や無届施設などが多数存在し、火災その他の事故により高齢者が多数被害を受ける等あってはならない事件が多発した経緯があります。その様な建物を「無届け有料老人ホーム」と総称し、その一掃のために老人福祉法や高齢者住まい法の整備強化が行われ、まさしく現在「サービス付き高齢者向け住宅」の整備が進められている訳です。

 私どもも複数の高齢者住宅の企画に携わってまいりましたが、高齢者特に介護の必要な高齢者のための住宅のあり方については、正直なところ未だこれがベストといえる最終形は見えておりません。都度反省点が生まれそれを改善するという繰り返しをしているのが現状です。
 高齢者が「安全」にしかも「快適」に住まうことのできる住宅であること、また高齢によって介護度・医療必要度など多種多様なニーズがあること、これをしっかり踏まえずして真に高齢者のための住宅とは言えません。

 助成金制度その他優遇策は、整備を促すための良い制度でありますが、それを単なるビジネスチャンスと捉えるのではなく、しっかり足元を見つめ、一件ごと丁寧に必然性に基づいた整備を継続していくことが重要であることを肝に銘じております。

医療タイムス紙 24年1月10日 掲載