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時間外労働の基礎知識

飲食業や美容業、アパレル産業では最近、未払残業が問題となりつつあり、幾つか訴訟や訴えが新聞紙面に載る事があります。記事になっていないだけで未払残業のトラブルは最近増えているようです。
医療や介護施設も例外ではなく、最近スタッフ達の訴えによりトラブルが増加傾向になっていると肌で感じております。
未払残業問題は先生方からご相談が多い事項の一つであり、私達もトラブルにならないように注意をさせていただいている事項です。
少し、時間外労働についてご説明させていただきます。
☆労働基準法(労基法)を正しく理解しましょう。
労基法第32条では、労働者は休憩の1時間を除き、1週間について週40時間を超えて労働させてはならないとされています。なお、小規模な医療施設等では特例として週44時間勤務が認められています。
1週間とは特別な定めがなければ、日曜日から土曜日までの歴週で1日は午前0時から午後12時を指します。
労基法は事業の種類に関わらず全ての事業所が対象となります。
つまり、法律上は残業をさせてはいけないことになっています。
☆36協定を結ぶことにより残業可能です。
労基法36条では、労使協定(事業主とスタッフとの取り決め)を結べば上記原則の例外を認め、残業をさせることができるとされています。この労使協定は通称「36(さぶろく)協定」といわれています。
事業所ごとに、残業をさせる理由や、業務の種類、延長可能時間等の内容を取り決め、労働基準監督署に届け出る事とされています。
毎年提出しなければなりませんが、後々のトラブルを避ける為に、届出は必ずしていただいた方が良いかと存じます。
☆変形労働時間制やフレックス制
最近、クリニックでも採用している事が多いのが変形労働時間制です。1日8時間や週40時間を超えて勤務させても取り決め内であれば残業手当の支給が無いので、時間や曜日によって繁忙期や閑散期の波がはっきりしている事業所にはお勧めです。また、フレックス制とは必ず勤務する必要があるコアタイムという労働時間帯は必ず出勤し、残りの労働時間帯は各人の裁量に任せて柔軟に勤務できる制度です。クリニックではあまり導入事例はありませんが、働く奥様方が多い事業所や、IT関係の事業所では多く採用されています。いずれも労使協定が必要となります。変形労働時間制の場合は労働基準監督署にも届出が必要です。

その他、みなし残業手当をあらかじめ支払ったり、スタッフを管理職にして、管理職手当を支給し残業手当を支給しない方法もございますが、みなし残業手当は、実際の残業と照らし合わせて手当の方が少なければ残業手当を支給する必要がありますし、管理職はただ役職名だけではなく、労基法で定められている管理監督者の条件に合致しないと認められませんので注意が必要です。どちらも結果として残業代が追加で発生するケースがございます。

昨今、地方では看護師や人材不足が叫ばれています。
やっと勤務していただいたスタッフも、こういった労務トラブルで退職されてしまい、更に悪評が地域に流れてしまいますと事業の根幹に関わる人材の枯渇という最悪の事態を招きかねません。

これからのクリニック経営では、しっかりと労基法を学び、スタッフ達が気持ちよく働ける環境を維持していくことはとても大切になってきます。

今まで、裁量やどんぶり勘定でスタッフを雇用されてきた先生方がいらっしゃいましたら、一度、現況を確認していただいて対策を早めにしていっていただければと存じます。

資料ダウンロードに2013年3月5日号の経営マガジンをアップしました。こちらに「時間外労働に関する基礎知識」のポイント解説が載っています。
是非、ご活用下さい!!