上手に使う生前贈与
以前このコーナーで「相続対策には多様な手法があり、節税効果を得るためには早めの実施が必要です」と書きましたが、今回は手軽に行える相続対策として生前贈与を取り上げたいと思います。
贈与税には年110万円の基礎控除額があるため、贈与を受ける方一人あたり年間110万円以下であれば税金を支払うことなく贈与する事が出来ます。ここまで書くと「年間110万円では相当な年数をかけないとまとまった金額を移す事ができないよ」と言われそうです。
そんなときにお勧めするのが年間310万円の贈与です。贈与税の税率は10%~50%の累進課税で、基礎控除後の課税価格が200万円以下は最低の10%です。310万円の場合贈与税の計算は、(310万円-110万円)×10%=20万円となります。税金は発生するものの310万円に対して約6.5%の税負担済み、多額の財産をお持ちの方が相続税で50%近い税率を適用される事を考えればはるかに安い税負担で財産を移転できるといえます。
またご存知の方も多いかもしれませんが、駆け込みでの相続税対策を防止するかのように、お亡くなりになった日より前3年以内に法定相続人に対して行われた贈与財産は相続財産に加算して相続税の計算をする、という決まりがあります。
このことからも生前贈与は早く行わないといけないといわれます。しかし見落としがちなのは法定相続人以外に行われた贈与はこの対象外ということです。お子さんとお孫さんがいる場合にはお孫さんは法定相続人ではないため駆け込み的な生前贈与も有効となります。
生前贈与を行う際には、贈与契約書を作成する、銀行口座間で資金を移動させ記録を残して証拠を残す、通帳、銀行印は贈与を受けた方が管理する、などの点にも注意が必要です。
基本的な節税対策である生前贈与も上手に使い節税効果を引出したいものです。
医療タイムス紙 2011年3月20日 掲載