解雇を巡るトラブル Ⅱ
前回労働争議がこじれた話を致しましたが、今回は入社後しばらく経ってから、
スタッフと解雇をめぐりトラブルにならないための対策について事例をもとに
お話致します。
勤続3年のスタッフAは、無断で遅刻することが度々あり、医事記録の記入にも
誤りが多く先生の目にはやる気がないように映っていました。そして最近
スタッフAのミスで患者さんの処置中に危うく怪我をさせそうになり医院としても
放置できないと考えた先生は、「やる気がないなら辞めてくれ」と解雇を
言い渡してしまいました。
先生の気持ちもわかりますが、今回のように突然先生から解雇を言い渡すような
方法では、トラブルを避けることは難しいでしょう。
今回の事例では、労働組合より不当な解雇であると団体交渉の申し入れがあり、
先生の心労も相当なものでした。
しかし、見過ごすことができない問題も多くあるのも事実です。
ここで大切なことは、医院として、スタッフAに遅刻や医事記録の記載ミスに
対する指導や懲戒処分を行い、次に同じように行った場合には退職してもらう
ことになることを伝えていなかったということです。
スタッフにしてみると一度の診療中のミスで解雇になるのはおかしいと考え
ますので、指導をし、事前に警告をすることが必要です。指導や警告を
していたとしても労働争議に発展する可能性はあるため、その際には指導や
警告をしたという記録に残すことで、事実を客観的に伝えることができます。
記録には日付、場所、問題行動、指導内容を記載します。同時に法的な
整備として医院のルールである就業規則の中で、スタッフが守らなければ
ならない服務規程を設け、それが守られていないので指導し、懲戒処分を
行っているとスタッフにわからせることも必要です。
(1)問題となる行動があった場合にその都度指導や懲戒処分をし、警告を行う
(2)上記の(1)の内容を記録に残す
(3)就業規則を整備し、医院の服務規程を明確にしておく
医療タイムス紙 22年12月20日 掲載