介護事業と営業
先週11月12日から14日まで、山形県で開催された高齢者施設視察セミナーに出席して来ました。
その中で一番印象に残ったこと、それは酒田市で特養等の施設やグループホーム・小規模多機能施設などの地域密着型施設を積極的に展開する社会福祉法人の成功事例発表でした。
その発表のテーマとは「介護を営業すること」でした。
一般的に、介護は福祉の観点から「営業」とは一番縁遠い職種であると考えられているのではないでしょうか。
この法人は介護施設の総量規制が行われる中、国が推奨する小規模多機能施設などの地域密着型を積極展開してきました。しかし一般的に、小規模多機能施設は地域密着型施設の中でも最も不採算であると云われるように、この法人においても赤字が続いていたとのこと。その一番の理由は云うまでもなく入居者の不足です。
これを打開すべくこの法人が考えたのが介護事業部の中に「営業本部」を設立して営業を推進し入居率を高めることでした。
営業本部が発足し任命された営業マンは2名、いずれもケアマネージャー・介護福祉士という介護の専門職でした。
2人の営業マンの当面のノルマは1日50軒の戸別訪問であったそうです。高齢者の居る世帯のリストアップし選別訪問するのでなく、あえて非効率の全戸訪問を行ったとのことです。それは訪問世帯に高齢者が居なくとも、親や知り合いを紹介してもらえるからとのこと。
最初は営業も不慣れ、効率も悪くなかなか入居者の獲得に繋がらなかったそうです。
営業を始め二人の営業マンが愕然としたことがあったそうです。それは施設のお隣の家に介護の必要な方が住んで居たのに、それを把握出来ていなかったこと、そしてその方が小規模多機能施設がどの様な施設か知らないため、当施設が何を行う施設か認識してもらってなかったことだったとの事です。
地域密着が売りの施設に拘わらずお隣さんの事さえ把握出来ていなかったことを知り、その翌日から二人の営業マンは、ただひたすら施設の周りの一軒一軒を訪問し、施設の説明を行う事にしたそうです。
すると口コミもあり、入居が一人二人と着実に増えていったそうです。
今では営業の数も6人に増え、5軒ある施設の入居率は平均で95パーセントを超える様になったそうです。
営業する意識を持つことにより、ただ入居者が来るのを待つ「施しの施設」から、自らが地域に入り込む「集いの施設」に転換出来たのだと思います。
我々、日々営業活動をする者としても、本当に参考になる体験談を伺うことが出来ました。併せて当法人が所有する複数の施設も視察出来、大変に有意義なセミナーでした。