お知らせ

高専賃の曲がり角

 高専賃(高齢者専用賃貸住宅)の運営大手でコンサルティングも手がけるN社が先月民事再生法適用の申請をしました。

 同社は元々、共同住宅の建設工事・不動産管理などを手がけていたが、2005年に高専賃が制度化されたのを契機に、全国の建設会社・不動産会社と業務提携をし高専賃運営のノウハウを提供するコンサル事業を展開して来ました。

 現在、同社ブランドにて供給された高専賃は全国最多であり、今後更に進行する高齢化時代に対応すべく高専賃を志向する各社は、このニュースに大きな衝撃を受けました。

 実は、私も同社のセミナーにも参加したことがあり、同社が高専賃が制度化される前に他社に先駆け建てた高齢者住宅も拝見しました。
 正直その時の感想は「自分の親は入れたくない」でした。改修型で、施設に入れない高齢者を無理やり?押し込んだ様な随分狭い閉塞感のある建物であったことを覚えています。
 
 高齢者が更に増える一方、高齢者施設の総量が制限される中、高専賃のニーズは今後間違いなく高まると思います。しかしより重要なことは高齢者の生活を理解した「ソフト」だと思います。

 N社は元々が建設・不動産畑なので「入居者を集めたり管理する能力はたけていたが、一方で入居者の介護・食事の提供についてノウハウがなかった」との指摘があります。
 高専賃の品質に問題があれば入居率が低迷するのも当然のこと。特に直営物件の家賃収入が低迷し、コンサル物件の入居状態も悪化しコンサルフィーを下げざるを得ず、結局事業収益が悪化したとのことです。

 法律の改正により、医療・介護が在宅へ誘導されているのは周知の事実です。在宅の受け皿として高専賃が有効な受け皿であることも間違いなく、私も高専賃には注目しています。

 今回のN社の倒産や同業他社の実例を見る中、「あるべき高専賃」が段々見えてきました。それは「より医療に近い高専賃」です。昨年医療法人に高専賃の所有が認められましたが、まさに「医療法人が経営する高専賃」こそが「高齢者が安心して入れる・家族も安心できる受け皿」といえるのでしょう。

 高専賃へ入居する際の紹介元も医療機関・ケアマネとのこと。やはり不動産屋に勧めらるのと安心感に大きな差がありますね。

 今回の出来事を契機に高専賃事業の方向性が明確になった様な気がします。高専賃事業者の医療機関へのアプローチが増えるのも間違いありません。 特に2012年までに廃止される療養病床を保有する医療機関は要検討だと思います。