開業希望の方
申請業務
開業における手続きは多岐に渡ります
提出すべき書類、時期について
しっかり把握しましょう
開業に関する各種届出手続き
ご開業にあたっては保健福祉事務所(保健所)、厚生局、労働基準監督署、税務署、役所などへ様々な手続きを行う必要があります。それぞれの提出先ごとに、提出すべき書類や時期などについて解説します。
保健福祉事務所(保健所)
新規に診療所を開設する際には、診療所開設届を、開設しようとする診療所の所在地を所管する保健福祉事務所に提出する必要があります。この手続きは下記の順に行うこととなります。
事前相談
開設計画時の変更可能な段階で、診療所の構造設備や添付書類、開設の日程、広告などについて所轄の担当者と面談し、あらかじめ相談しておきます。
開設
医療法第8条では「開設した日から10日以内に診療所の開設を届けること」となっています。ここで言う開設した日とは、届出上の開設日であり、施設が整い診療を開始できる状態になったことを指します。保険診療を行う場合、実際に診療を開始するのは保険医療機関の指定申請受理後となります。
開設届
上記開設日後10日以内に提出。
また、開設届のほかに届け出る許可手続きとして、代表的な例としては以下のようなものがあります。設備や診療内容に応じて届け出ることとなるので、開設届提出前に確認をする必要があります。
- ①診療用エックス線装置備付届
- ②麻薬施用者免許申請、麻薬管理者免許申請
- ③各種医療機関指定申請(結核、被爆など)
厚生局
開設する診療所において保険診療を行うためには、保険医療機関指定申請書を、診療所の所在する地域を管轄する地方厚生局都道府県事務所(長野県の場合は関東信越厚生局長野事務所)に提出し、指定医療機関コードを発行してもらう必要があります。
この申請書の受付には毎月締切日が設けられておりますので、事前に保険医療機関指定申請の締切日を確認した上で前述の保健福祉事務所への開設届を行うようにしましょう。何故なら厚生局への保険医療機関指定申請は、保健福祉事務所にて開設届が受理された後にしかできないこととなっているからです。開設届の提出が遅くなり、厚生局事務所の締切日を過ぎてしまうと、診療開始の時期が一ヶ月以上も先に延びてしまいかねません。実務的には、保健所への開設届作成と同時に保険医療機関指定申請書も作成し、開設届受理前に地方厚生局事務所の担当官に申請書類の事前チェックを受けておくことをお勧めします。
この他に、地方厚生局にて行う手続きとして、基本診療料の施設基準等に係る届出書・特掲診療料の施設基準に係る届出書の提出があります。保険診療料の中には、施設基準の要件を満たし、かつ届出をしない限り所定の点数を算定することができないものが数多く存在します。こちらも保険医療機関指定申請書と同様に、都道府県事務所ごとに毎月締切日が設けられているので注意が必要です。
スタッフ採用
次に従業員を雇用する上で必要となる手続きについて紹介します。
社会保険事務所
健康保険及び厚生年金保険に加入する際には、事業所の所在を管轄する社会保険事務所にて手続きをします。
労働基準監督署、公共職業安定所
労災保険と雇用保険の2つを合わせて労働保険と言います。労働保険の加入の手続きは、労働基準監督署と公共職業安定所との2つに分かれますが、手続きの順番は労働基準監督署が先となります。
なお、労働関係成立の日から50日以内に労働保険概算保険料を納付しなければなりません。
税務署
次に医院開業に際して税務署に対して行う届出・申請手続きのうち、主なものを紹介します。これらの中にはその提出が法律で義務付けられているものと、任意ですが、納税者が有利な方法を選択して提出するものとに分かれます。提出期限を過ぎてしまうと開業年から適用することができなくなる場合もありますので、手続きの内容と合わせて提出期限についても確認が必要です。
個人事業の開廃業等届出書
新たに事業を開始したことをこの書面により届け出ます。事業を開始した日から1か月以内に納税地の所轄税務署長に提出します。
給与支払事務所等の開設届出書
給与の支払事務を取り扱う事務所等を開設したことをこの書面により届け出ます。事務所を開設した日から1か月以内に所在地の所轄税務署長に提出します。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書
源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限となるので毎月納付業務が発生することになりますが、この申請をすることで7月10日・1月10日の年2回にまとめて納付することができるようになります。
青色申告承認申請書
青色申告書によって申告するためには、納税地の所轄税務署長に対して所定の申請を行って初めて認められることになります。所得税法の規定では、「業務につき帳簿書類を備え付けてその取引を記録し、かつ、その帳簿書類を保存しなければならない」とされています。青色申告にはこのような条件が求められる一方、様々な特典もあります。その特典として代表的なものは下記のようになります。
- ・青色申告特別控除(10万円または65万円)
- ・青色事業専従者給与の必要経費算入
- ・各種特別税額控除及び減価償却の特例
- ・一括評価による貸倒引当金の必要経費算入
- ・純損失の繰越控除
- ・純損失の繰り戻しによる還付
- ・推計による更正又は決定の禁止
青色事業専従者給与に関する届出書
所得税法では、事業主が生計を一にする親族に支払った対価はその事業の必要経費に算入することができません。しかし、青色申告者については事業と家計との区別がはっきりしていることから、実際に事業に従事している親族に支払う正当な対価については必要経費に算入することを認めています。
所得税のたな卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
たな卸資産の評価方法、減価償却資産の償却方法とも、届出期限は翌年の3月15日(確定申告期限)であるため、所得の計算をし終えてから有利な方法を選択することも可能です。専門家と相談の上有利な方法を選択し、届出が必要な場合は届出を忘れないように注意が必要です。
その他
労働基準監督署
労災指定医療機関としての指定を受けるためには、労災保険指定医療機関指定申請書に、診療所を開設する際の開設許可証の写しと、診療所の施設等に関する概要書を添付して、診療所の所在地を管轄する労働基準監督署長を経由し、所轄都道府県労働局長に申請することになります。
市町村
生活保護法の指定医療機関として指定を受ける場合や、身体障害者福祉法の規定に基づく医師の指定を受けようとする場合など、指定医療機関申請等の書類提出先が福祉事務所等の地方公共団体の担当窓口となるものがあります。問い合わせの窓口は、都道府県に設置されている所が多いです。指定を希望する場合は、保健福祉事務所への事前相談と平行して事前相談を受けておくと良いでしょう。
医師会
医師会は、郡市区等医師会・都道府県医師会・日本医師会の3つの形態があり、それぞれが独立した団体となっています。それぞれの医師会が相互に連携しあい、地域住民の健康保持増進をはじめ、医療・保健・福祉の充実・向上のための諸活動を行っています。入会等の手続きの窓口は、原則として所在地にある郡市区等の医師会となります。医師会に加入しますと、医師国保に加入できたり、団体割引のきいた保険に加入できる等メリットがあります。
申請先 | 申請書類 | 提出期限 |
---|---|---|
保健福祉事務所 保健所 |
診療所開設届(個人開業の場合) | 開設後10日以内 |
診療用エックス線装置備付届 | 備付後10日以内 | |
麻薬施用者免許申請書・麻薬管理者免許申請書 | 事前 | |
各種医療機関指定申請書 (結核・被爆など) |
保険医療機関指定後 | |
地方厚生局 | 保険医療機関指定申請書 (個人の場合) |
開設届出後、診療開始予定月の前月20日まで |
診療料の施設基準等に係る届出書 | 算定を開始しようとする月の締切日 | |
社会保険事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 新規適用事業所現況書 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 健康保険被扶養者(異動)届 |
当該事実のあった日から5日以内 |
労働基準監督署 | 労働保険 保険関係成立届 労働保険概算・確定保険料申告書 労災保険指定医療機関指定申請書 |
保険関係成立の日から10日以内 保険関係成立の日から50日以内 保険医療機関指定後 |
公共職業安定所 | 雇用保険適用事業所設置届 雇用保険被保険者資格取得届 |
事業所設置から10日以内 資格取得の日の翌月10日まで |
税務署 | 個人事業開廃業等届出書 | 事業を開始した日から1か月以内 |
給与支払事務所等の開設届書 | 事務所を開設した日から1か月以内 | |
源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書兼 納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する 届出書 |
適用を受けようとする月の前月末日 (納期限の特例については12/20) |
|
青色申告承認申請書 | 事業を開始した日から2か月以内 | |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 事業を開始した日から2か月以内 | |
たな卸資産の評価方法の届出書 | 翌年3/15(確定申告期限)まで | |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 翌年3/15(確定申告期限)まで |